July 30, 2004

能をつかんとする人

『能をつかんとする人、
 よくせざらんほどは、なまじに人に知られじ、
 うちうちよく習ひ得てさしいでたらんこそ、
 心にくからめとつねに言ふめれど、
 かくいふ人、一芸も習ひ得ることなし。

 いまだ堅固かたほなるより、
 上手の中に交じりて、
 そしり笑はるるにもはぢまず、
 つれなき過ぎて、たしなむ人、
 天性その骨なけれども、道になづまず、
 みだりにせずして、年を送れば、
 堪能のたしなまざるよりは、
 つひに上手の位にいたり、
 徳たけ、人に許されて、
 双びなき名をうることなり。

 天下のものの上手といへども、
 はじめは不堪の聞こえもあり、
 無下の暇瑾もありき。

 されどもその人、
 道の掟正しく、これを重くして、
 放埓せざれば、世の博士にて
 万人の師となること、
 諸道かはるべからず。』


第百五十段 徒然草 
吉田兼好




chakovsky at 19:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)books 
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chakovsky
人との関わりのなかでしか自分を見出せない、action ならぬre-action な人間。数字や詳細に弱く、周りはざっくりとした雰囲気でしか捉えていません。ま、細かいこと言うなよ。な。
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